不忍池の秋 | 9月の彼岸とヒガンバナまたは柳そして屋台
秋の足音聞こえる池
9月の20日ごろ、夏の終わりをようやく肌で感じられるころに上野不忍池を訪れる。ちょうどその時は彼岸の時期であった。だからと言って特別不忍池に変わった様子は見られない。いつも通りの観光客の多い風景が広がっている。それでも人が幾分少なく感じられたのかもしれない。
蓮の花はないが葉は元気
蓮の花は咲いていなかった。7月の終わりごろからピンクの花が見られる不忍池だがさすがに秋になるとその鮮やかな花も見ることはできなかった。だが葉は大きい。夏に劣らず1mもあろうかという大きさで元気良く広がっている。だからこの時期でも不忍池の水面は緑でおおわれている。そして葉の間から花托と呼ばれるハチの巣状の茎が伸びている。中には種が詰まっていた。きっと来年今年と同じようにきれいな花を咲かせてくれるのだろうと名残惜しそうに目をくれてやる。
屋台そして清水観音堂と色づく植物
上野公園から弁天堂へと続く道には屋台がある。この日もいつも通りだった。そしていつも通りの風景だった。食べ物のにおいと人々の談笑する声がお馴染みである。弁天堂付近までいって振り返ってみると遠くに清水観音堂が見えた。そして木々の緑がやや黄色混じりになってきたのかと感じた。東京の暑い夏も終わり秋の訪れを感じた瞬間である。
彼岸の時期に咲くヒガンバナは草臥れていた
秋らしいものはないだろうかと探しているとヒガンバナを見つけた。弁天堂のボート乗り場方面に向かう途中小さな場所に咲いていた。特別なヒガンバナではなかったが不忍池の蓮の葉をバックに咲いている様を見ると力強さと儚さを自然と対比させる。と思ってよくよく見るとずいぶん草臥れたヒガンバナだった。線のように細い花びらは終わった線香花火みたいに萎れている。彼岸であるにもかかわらずヒガンバナに元気がなかった、と感じては酷だろうか。酷というより俺の無知だろう。今度は元気なうちに写真を撮りに来ようと思い上野駅方面へと踵を返す。
不忍池の柳
不忍池には柳の木も多い。秋めいてきたこの時期いかにも柳らしく緑の葉を垂らしている。ひょっとしたら9月の不忍池で一番生き生きとしていたのはこの柳だったのかもしれない。池を周遊しているとふとしたきっかけでそこに柳があることに気づく。しかしきっかけがなければ気づかないかもしれない地味な存在かもしれない。